鎌倉彫金工房のクラフトマンシップ vol.4 一本に宿る職人技
2021.09.03
手にした人の何気ない日常を彩るように。迷ったときの道しるべとなるように。愛着がわく指輪に育つように。
鎌倉彫金工房で作られた指輪の奥には、職人たちの技術や指輪への想いが宿っています。
美しさの追求
鎌倉彫金工房の指輪の特徴は、「シンプルで永く愛せるデザイン」にあります。
いつの時代も愛され、身につける人を選ばないデザイン。時を経ても色褪せない、普遍的な美しさがあります。タイムレスという言い方をしたりもしますよね。
そしてシンプルで永く愛せるデザインは、仕上がりに妥協が許されません。シンプルであればあるほど、ごまかしがきかなくなるからです。例えば100ある要素のうち、2つがずれていても気づきにくいかもしれませんが、それが10の中の2つだといかがでしょう。全体の20%をも占めることになります。
きれいな真円になっているか、表面が滑らかな形になっているか、仕上げた箇所に傷がないかなど、ポイントはいくつもありますが、削ぎ落とされたシンプルなデザインだからこそ、それらすべての要素が指輪1本に如実に反映されるのです。
例えば最初の調理実習で覚える卵焼きも、列を消していくだけのテトリスも、そして指輪作りも。何事もシンプルであればあるほど難しく、奥が深いんですね。
永く使えること
毎日身につける結婚指輪。日常身につけていれば傷がつきますし、重い荷物を持ったきっかけで変形してしまうこともありえます。繊細な美術品のような扱いではなく、末永く、安心して日常を共にしていただけるように……。絶対に傷つかない、変形しない指輪は難しいですが、ある程度の指輪の耐久性や、そしてつけ心地も私たちが考えなくてはならない大切な要素です。
具体的には、指輪の幅や厚みを細く薄くしすぎないよう調整したり、指に接する内側の角を丸くして滑らかにしたり……。お選びいただける指輪のデザインを限定しているのも、ある一定の耐久性やつけ心地、つけやすさへのこだわりのひとつと言えるでしょう。
建築物や工業製品の分野に「機能美」という言葉があります。
余分な装飾をなくし、むだのない形や構造を追求した結果、自然にあらわれる美しさのことを言いますが、新幹線や工場などが度々例に挙げられています。
指輪も装飾品ではあるものの、シンプルな指輪には“機能美的”な美しさがあるのではないか。永く使えることを目指した指輪には、見た目だけの表面的な美しさではない、身につけているからこそ生まれる本質的な美しさが宿るのではないか。
……少し強引かもしれませんが、日常的に身につけるために仕上がった指輪からは、そのような「機能美」が感じられるかもしれません。
その様な指輪をお客様がご制作いただけるように、私たちは精進し続けます。
スピードとの両立を目指す
「最低の手数(てかず)で、最高の一本を作る。」
鎌倉彫金工房にとって忘れてはならない、職人の大切な哲学です。
お客様に手作りを楽しんでもらう工房なのに、職人が何度も手直ししていたら「職人さんが作ってくれたもの」と思わせてしまう。そのうえオプションの加工がなければ、基本的に指輪は当日に完成して、お持ち帰りいただくことも目的のひとつ。あれこれ迷っている時間はないのです。
「しこたま練習するしかない」というのは新入りの職人候補に伝えられる格言。毎日試行錯誤を重ねて少しずつ腕を磨き、「どこをどれくらいの力で、どうすればこうなる」を感覚で掴んでいくほか、近道はありません。
今日も鎌倉彫金工房の職人たちは、想いをカタチにするために……。工房らしい職人技を、愚直に磨いています。