鎌倉彫金工房のクラフトマンシップ vol.2 指輪ができるまで
2021.07.08
STAFF ONLYの2階を上がると、作業場がひろがっています。木のぬくもりが感じられるほっこりとした小さな作業場ですが、技と経験なくしては成り立たない、職人たちの気骨が感じられる空間です。
そんな工房の2階をのぞいてみましょう。
指輪ができるまでの工程1.素材を切り出す
プラチナやゴールドなど、指輪の材料となる金属のインゴット(塊)を、ローラーという工具を使って棒状に伸ばします。お客様のリングサイズにあわせて必要な長さで切り、指輪作りが始まります。
工程2.リング状にする
リングサイズに合わせて切った材料を、バーナーで真っ赤に熱してやわらかくします。ぐにっと曲げて、材料の端と端をつなげましょう。
つなぎ目部分を溶接するために、再びバーナーを使って「ロウ付け」します。「ロウ付け」とは、つなぎ目部分に小さく切った「ロウ」と呼ばれる金属のカケラを溶かして流し込み、金属と金属をくっつける溶接方法のことです。
手元が狂えばロウが流れてくれなかったり、接合したい箇所でないところに流れてしまったりするため、緊張感を持って作業しなければならない工程です。
なんだか…おにぎりみたいです。
工程3.丸くする
おにぎりのようにいびつなリングを「芯金(しんがね)」という鉄の棒に通し、丸くしながらサイズを調整していきます。
ここで登場するのが木づち。カンカンと音を響かせ、目指すサイズになるまでひたすらに叩きます。叩いてサイズを合わせることで、やわらかくなっていた金属がさらに締まって、硬くなっていきます。
この工程のもうひとつのゴールは、リングを真円にすること。
サイズを合わせる段階でリングも丸く、指輪らしい形になっていきます。
工程4.形を作って仕上げる
金属のヤスリを使って、丸くしたリングの形をさらに整えます。
リング内側の角も忘れずに。削って磨いて、つけ心地が良くなるよう、気持ちを込めてなめらかに仕上げます。
工程5.宝石を留める
宝石は小さいもので約1mm。割れたら元に戻せない、石留めは制作工程の中でも神経を使う工程です。
ドリルを使用して宝石が入る場所を作り、宝石を入れたら鏨(たがね)という道具を使って宝石が動かないように押さえていきます。
大きなダイヤを留める場合は「石座」と言われるダイヤのための台座をリングに溶接し、傾かないようにバランスを見ながら留めていきます。
ダイヤモンドも誕生石も、ひとつとして同じものはありません。
1粒1粒に向き合って、これからリングを身につける方を想像しながら、気持ちを込めて仕上げることこそ、職人に必要とされる素養かもしれません。
工程6.仕上げる
キズや細かい凹凸を取り除き、クリア仕上げの場合は曇りが一切ないように、複数のヤスリやヘラというピカピカに磨いた金属の棒を駆使して、輝くツヤを生み出します。
最後に汚れを落として刻印を施し、あらためて細かいチェックをしたら、お客様のもとへお届けします。
指輪は身につける人によって、異なる風合いに成長していくものです。それはまるで、人生を共に歩む大切なパートナーのよう。
ここから旅立つリングたちが、身につける人にとって愛着のわく1本に育ちますように。