ジュエリーはただのモノ、ただの装飾品じゃないんですよね
Craftman interview 07
H.ASAKURA
子どもの頃から手を動かすことが好きだったという浅倉。単なる装飾品ではないジュエリーに魅せられた彼女が、鎌倉彫金工房の職人になったきっかけや、どのような想いでお客様と、指輪と向き合っているか話を聞きました。
まさに私がやりたい仕事じゃないの!
子どもの頃はお絵描き教室に通ったりして、手を動かすことが好きでした。高校では美術コースを選んで絵を書いたり。陶芸も好きでしたね。ジュエリーづくりとの出会いも高校。放課後に、美術の先生がワックスを使ってシルバーのアクセサリーを作っていたんです。作ったものが金属になってでき上がる面白さに、魅力を感じました。
でもその後、仕事に選んだのはジュエリーショップの販売員。人と話すのが好きだったのもありますが、ジュエリー職人になるという道を早々に決めてしまうのが怖かったんです。職人さんって硬いイメージがあったりしますしね。ひとまず業界にまず関わって、極めたいと思ったらそこから広げていけたらいいなって。
販売員を8年ほど続けることができて次の道を探す中、人と話すこともしたい、やっぱり職人にもなりたい、という気持ちになり、鎌倉彫金工房に出会いました。まさに私がやりたい仕事じゃないの!って。求人を見つけたときは驚きました。
今は、お客様の指輪づくりのお手伝いをする接客と、お預かりした指輪の加工を担当しています。
肉眼では気づかないさりげないところ
指輪づくりも経験したことがありましたし、長年ジュエリーに携わってきましたから見る目もあると自負していました。しかし改めて教わると、全然ダメ。打ち砕かれましたね。指摘されるけど、どこがどうダメなのかさえ分かりませんでした。肉眼じゃ見えないくらいなんですよ。みんな目がいいなぁって思いながら(笑)
でも、その細かい傷や小さな歪みなどの細かいところが全部全部相まって1本の完成度や品質になっていたんだなというのにも気づくことができました。前職で売っていた既製品の指輪もそうですよね。肉眼では気づかないさりげないところこそが、職人が一番こだわらないといけない部分なんだろうと思います。
そのキズや歪みが感覚で分かるようになってくるのも面白い。未だにまだまだなところはありますけれどね。指輪作りは奥が深いですから、どこまでいっても改善し続けたい気持ちはあると思います。たくさんの技術を習得したいというのもありますしね。
日々楽しさや発見がある
仕事の醍醐味は、日々楽しさや発見があること。今では加工もたくさん任せてもらえるようになりましたし、接客ではお客様とたくさんお話することもできる。毎日更新されていくというか、課題が出てきたりして、毎日同じことの繰り返しではないのが、すごく新鮮で楽しいです。
特に接客にはマニュアルがありません。最初は戸惑いました。前職のジュエリーショップは、ノルマがあったのもあり「こんなのはどうですか」って提案型の接客をしていたんです。しかし、鎌倉彫金工房の接客はどちらかというとお客様の意見に寄り添って、見守るような接客。お手伝いという意味合いが強いですよね。ただ、それも特別明示されているわけではないし、先輩は「浅倉さんらしい接客でいいよ」と(笑)
自分のペースでできるのはありがたいですが、お客様や工房全体の雰囲気を自分で感じ取らなければいけません。難しいですが、その分やりがいがあると思います。
ジュエリーはただの装飾品じゃない
ジュエリーってどんな存在なんだろうと考える時、初めて自分で買ったネックレスに抱いた愛着を思い出します。
毎日何気なく身につけるジュエリーですけど、ファッションのアクセントという役割だけじゃなくて。想いを込める、託すっていう役割が、ジュエリー、特に婚約指輪や結婚指輪にはあると思っています。ただのモノ、ただの装飾品じゃないんですよね。
私は今までも、これからも、ジュエリーに携わる仕事に就いていたいと思っています。ただのファッションではない、そんなジュエリーが大好きだからです。手作りで指輪を作られたお客様にも、できあがった達成感はもちろん、その指輪に想いや特別感、お二人らしさを感じていただきたいと思っているんです。
浅倉のおすすめリングは……
クリア仕上げ
結婚されたばかりの“真っ白”なお二人と、磨き上げたクリア仕上げが重なるような気がします。そこから使用キズがついたりして、お二人の想い出が刻まれていく。こうしてお二人だけの指輪に仕上がっていくのが、クリア仕上げの素敵なところだなと思っています。