作っている時間や空間にもこだわりたい
Craftman interview 16
T.MATSUKAWA
建築学出身の彼が最もこだわるのは、心地の良い「空間」でした――。工房のアイディアマンこと松川が、どのようにして鎌倉彫金工房の一員となり、お客様や指輪とどのように向き合っているのか話を聞きました。
建築学部のデザイン学科に通っていたので…
彫金との出会いは学生時代でした。建築学部のデザイン学科に通っていたので、図面を書いたり、家具を作ったりする授業に出ていたんですが、それ以外に金属を扱う授業もあって。そのときに初めて指輪を作る機会がありました。アクセサリーが好きだったのもあり、それからは趣味で指輪を作るようにもなったんです。
100円ショップのヤスリや彫刻刀を使って、ワックスと呼ばれるロウ材を削って原型を作るんです。原型を持ち込むと金属を溶かして指輪を作ってくれるお店があるので、そこへ持って行って、出来上がったらもう一度自分で磨いたり。
大学を卒業してからは大阪のインテリアショップで、家具や雑貨を売る販売スタッフとして働きました。元々接客業が好きで、今の仕事にも活かされています。趣味だったものづくりと接客のスキルが合わさって、まさにうってつけの仕事に巡り合えたという感じですよね。
作っている時間や空間にもこだわりたい
常に意識しているのは、お客様が指輪作りを楽しめているかということ。数ある工房の中から鎌倉彫金工房を選んでくださったお客様には、作る体験自体を楽しんでいただき、その時の会話や雰囲気、時間や空間全体まで楽しい思い出として残していただきたいと思っているんです。
手作りで指輪を作るって、もちろん記念日や大切な日におすすめなんですが、それだけでなく、お二人の関係性をさらに深める機会としてもぴったりだと思っていて。ものづくりの体験というと、他にもお皿を作ったり香水を作ったりいろいろありますが、指輪ほど自分自身やパートナーに親身になって寄り添えるアイテムってそう多くないと思うんです。単に指輪を1本買う、ということ以上の価値を持っているんじゃないでしょうか。
だからこそ、最終的にできあがる指輪の品質も大切ですが、それと同じくらい、もしくはそれ以上に、作っている時間や空間の品質にもこだわりたくて。
正直、作るだけであれば他でもできますよね。そう考えると、うちでしか味わえない楽しさや雰囲気を提供することが、お客様にとっての価値になる。そう考えながら日々お手伝いさせていただいているって感じですね。
師匠や先生って呼んでくださるお客様もいらっしゃって…
やりがいは、お客様とより深く関われることです。お客様と2〜3時間もの間を共にするって、他には美容院くらいしか思い浮かばないくらい、珍しいことだと思います。インテリアショップでは、世間話を交えながら商品の良し悪しやメリットデメリットをお伝えする接客が中心でしたが、工房ではより親身になれるというか、お客様一人ひとりに深く寄り添うことができる。これがこの仕事の醍醐味と言えると思います。
また、私たちのことを師匠や先生って呼んでくださるお客様もいらっしゃって、それが嬉しい瞬間のひとつだったりもします。私たちは単にお手伝いをしているだけで師匠でも先生でもないのですが、親しみを込めてそう呼んでいただけると、お客様との距離がぐっと縮まったように感じますよね。最後、一緒に写真撮りましょうって言ってくれるのも嬉しいです。
最高の思い出を残していただくために全力を尽くす
品質の高い指輪が作れることや、丁寧でわかりやすい説明は当たり前として、鎌倉彫金工房の真の魅力は、お客様に最高の思い出を作っていただくために全力を尽くすところだと思っています。
写真の撮り方ひとつとってみても、お客様がご自身で作った指輪を美しく撮れるようアドバイスさせていただいたり、あとは近くのこのレストランが美味しいんですよっておすすめしたり。指輪作りの本筋からは離れているかもしれないけれど、その一つひとつがお客様がその日を最高に楽しんでもらえることに繋がる。それこそが鎌倉彫金工房らしさだと感じますね。多くの方に、ぜひ一度その魅力を体感してみてほしいです。
松川のおすすめリングは……
つちめデザイン
手作りならやっぱりつちめがおすすめ。ご自身で叩いて模様をつけていくので、よりオリジナル性や、作った感が味わえると思います。カジュアルなデザインでもありますから、日常使いしやすいのも魅力ですよね。