美しく作ること。それをテーマにしています
Craftman interview 25
T.NAGANO
美しい指輪づくりに情熱を注ぐ加工スタッフの永野。柔らかい口調、優しい話し方が印象的な彼が、どのようにして鎌倉彫金工房の一員となり、お客様や指輪とどのように向き合っているのか話を聞きました。
モノづくりと接客の両方ができる仕事
元々ジュエリーの仕事に就きたいと思っていたわけではないんです。新卒で入った商社では営業をしていましたし、転職する時も具体的に何がしたいというのは全くありませんでした。ただ、何かを作る仕事が性格的に向いているのかなとか漠然と考えたりして。そんな中、ジュエリーブランドの下請けメーカーで、ネックレスやピアスを組み立てる仕事に就いたんです。
ジュエリーの業界へ飛び込んだのは、友人の影響が大きかったですね。その友人はジュエリーの専門学校を卒業していて、自分でジュエリーを作ったりする人で。そういう世界もあるんだな、アリかもな、って。今思えば本当に軽い気持ちでした。
鎌倉彫金工房を志望したのは、前職が近しい業種だったこともありますが、それだけではなくて。前職は作ることが主でお客様と接することってほとんどなかったんですが、ある時、展示会でお客様に直接お会いする機会がありました。実際に喜んでくれている人を見て、やっぱり嬉しかったんですよね。
その経験があって、次はモノづくりと接客の両方ができる仕事がいいなと。ここなら両方できるんじゃないかなって。現在は、お客様の手作り指輪のお手伝いをしながら、加工スタッフとして主にお預かり品の加工を行っています。
こういうのを作りたいんですって、最高の賛辞
仕事で喜びを感じる瞬間は、僕が加工させていただいた指輪をお受け取りにいらっしゃった際、お客様が喜んでくださる時。「きれい!」とか「わー!」とかのお声を聞く時は、結構嬉しいです。
あとは、見学やデザインを決める段階で「こんなのが作りたい」と先輩作品集から写真を見せてくださるお客様がいらっしゃるんですが、それが自分が加工を担当したものだったら、ちょっと嬉しいかもしれないです。こういうのを作りたいんですっていうのは、何か最高の賛辞というか、嬉しいですね。
美しく作ること。それをテーマにしています
仕事で大切にしていることは、美しく作ること。それをテーマにしていますね。工房には、ひとつひとつの加工に目標とされている形や品質基準があります。そこが100点だとしたら、101点や120点を目指すようなイメージ。言葉にするのは難しいですが……。単に真円だとか傷がゼロだとかではない、心が動く美しさ、みたいなものを目指しています。
あとは、お客様のご要望をできる限り叶えるというのも意識していることです。時に特殊なデザインをお求めになるお客様もいらっしゃいますが、工房の規格の中で実現できるアイディアを考えて「こっちならできます」や「これなら近くなります」みたいな。自分の技術を存分に注ぎ込むというか、これまで多くの加工を担当してきた加工スタッフとしての経験と知識が活かせたらと思っています。
自分らしく自然体でいること
お客様と接する上で一番大切にしていることは、自分らしくいることです。無理に繕うことはしたくないという思いは常にあります。
手作り指輪ってお客様に楽しんでいただくことが大事だったりするので、新人の頃は無理して明るく振舞おうとしたこともありましたが、もう全然ダメで(笑)かえって不自然で、自分の「うまくやらなきゃ」っていう緊張が、お客様に伝わってしまっていたんですよね。
言葉遣いも同じで、無理はしない。例えば相槌は「そうですか」と言いますが、「左様ですか」だとちょっと僕は違うな、背伸びしちゃってるなと。自然かどうか、身の丈に合うかどうかっていうのは、注意を払っているかもしれないですね。「めっちゃいいですね!」など、時には意図的に言葉を崩したりもします。
全ては、安心して、リラックスして指輪づくりを楽しんでいただきたいから。最終的にたどり着いたのが自分らしく自然体でいることでした。ただ、正解かどうかは分かんないですよ。ただ、それがもしかしたら一番いいのかもしれないと思うんです。僕にとって。
永野のおすすめリングは……
イエローゴールド、平打or甲丸
素材はイエローゴールドが好きですね。理由は単純。かっこいいから。K18ではありませんが自分の結婚指輪にも金を選んだので、思い入れみたいなものもあるかなと思います。あとはデザインですね。規定の2.5mm幅までなら平打なんですが、幅が広いリングの場合なら甲丸がいいかな。完全に自分の感じ方ではあるんですけど、割りと大きめの自分の手に似合う気がします。