初めて金属を触ったときの、あの感動や楽しさを
Craftman interview 24
A.MORIZAKI
鎌倉彫金工房の哲学「作る楽しさを伝えたい、そして喜んでもらいたい」を体現する森崎。モノづくりの原点を忘れずお客様に寄り添う彼女が、彫金と出会ったきっかけや、どのような想いでお客様と、指輪と向き合っているか話を聞きました。
金属、彫金の虜になりました
ビーズアクセサリーを作ったり絵を描いたり、昔からモノづくりが大好きで、高校卒業後はジュエリーが学べる専門学校に進学しました。
そこで金属加工というものを初めて体験したんですけど「金属ってこんなにいろいろできるの!?」と驚いたのがはじまりでした。ゴールドを他の金属と混ぜて合金を作ったり、丸くして、引き伸ばして、棒や板にしたりと「自由自在に何でも作れるんだ! こんな硬いのに!」って。そこから金属、彫金の虜になりました。
専門学校を卒業して入社したのは、ジュエリーショップを運営する会社で、お客様の希望をヒアリングしてイメージを絵にするジュエリーデザイナーの仕事をしていました。販売をすることもありましたが、既製品をただ売ることより、人と深く関わること、デザインのようにお客様とお話をしてご希望を目の前で形にするという接客がすごく好きだなって思っていました。
鎌倉には15年間住んでいて、鎌倉彫金工房は当時のお散歩ルート内。だから入社する前から存在は知っていました。ジュエリー会社を退職して業界から離れている間も、個人的に制作を続けながら、彫金を仕事にしたいっていうのはずっと考えていたことだったので応募したんです。
やりがいは、感謝の言葉を直接いただけること
この仕事の一番のやりがいは、感謝の言葉を直接いただけること。ご制作が終わってお帰りになる際や、お預かり品をお受け取りにいらっしゃる際に「ありがとう」や「楽しかった」と言っていただけることが嬉しいですね。
あとは、伝えたいことが伝わった時というのも、すごく好きな瞬間です。手をどう動かせばいいとか、これをすればこうなるとか、人それぞれで理解の方法が異なるので伝え方に迷う時もありますが、分かってくださったなっていう表情や、あ! なるほどね、というリアクションをいただけると、「やった!」と思います。
「二人で協力して2本作りましょう」
お客様の指輪作りをお手伝いする上で大切にしていることは、お二人の結婚指輪だから、お二人で作ってもらいたいということ。二人でモノづくりをする楽しさもあるし、二人だからこそ互いに励まし合いながら頑張れるっていうのもあると思います。
「二人で協力して2本作りましょう」とよくお伝えするんですが、力が必要な作業は男性の方にお願いしたりなど、お互いの力を借り合って作っていただいた方が、私がお手伝いするよりもきっと楽しいですよね。指輪を手作りするって確かに大変で疲れる作業ですが、その過程自体が思い出になって指輪に込められればいいな、と考えています。
初めて金属を触ったときの、あの感動や楽しさがお客様にも…
あの硬い金属が自在に変形する、しかも自分の力で、っていうのは一番のインパクトだと思います。そして、それぞれの工程が何のためにあるか、その一つひとつを理解してもらえると、さらにその感動が強くなるような気がしています。「なるほど」と思える瞬間が私自身も楽しかった記憶があるので、それをお客様にも伝えられたらいいですよね。単なる工程ではなく指輪作りの過程全体を楽しんでいただけるのかなとも思いますし。
彫金やモノづくりの楽しさをいろんな側面でお伝えしたいので、例えば、場合によっては鋳造で作るのもいいんですよっていうのをお話ししたりすることもあります。工房は金属を叩いて作る鍛造製法を採用していますが、金属を型に流し込んで作る鋳造っていう製法もあって、それぞれに特徴があるので、自分の経験も踏まえて話せると面白いかなと思います。そっちも機会があればぜひやってみてくださいね、というような感じで。
学校で初めて金属を触ったときの、あの感動や楽しさがお客様にも伝わるといいな。その驚きや作る楽しさをお客様と共有できたら嬉しいです。
森崎のおすすめリングは……
イエローゴールド、ヘアライン
元々イエローゴールドが好き。色も華やかですごく素敵だなって思います。仕上げはツヤツヤのクリアをよく目にしますが、個人的にはヘアラインの質感が好みです。同じつや消しのマットと比べてちょっとツヤが残る感じがお気に入りです。あとは、ヘアラインって使っていくうちに、だんだん模様が潰れて光沢感が出てくるんですよね。そういう変化を楽しめるのもすごくいいなって思っています。