どのように接客するかは、すべて職人に委ねられる
Craftman interview 05
K.FUTAMI
「今はまだ、一合目の麓」と語るのは、謙遜か、指輪の奥深さを見た人間の真実か。4年前、小さな飲食店でご飯を作っていたという二見が、職人になったきっかけや、今どのような想いでお客様と、指輪と向き合っているか話を聞きました。
結婚を機にライフスタイルを見直したとき…
前職はビストロのような小さな飲食店でご飯を作っていました。そこで自分が作ったものに対して喜んでいただけるっていうのを目の前で感じる経験ができて。次もなにか作ること、ものづくりを仕事にしたいなと思って鎌倉彫金工房の職人になりました。4年前のことです。
あとは前職を退職する直前に結婚したこともあると思います。その飲食店は3〜4人でやっている小さいお店だったこともあり、結婚を機にライフスタイルを見直したときに、飲食を続けるのは難しそうだと感じたのも正直あるかもしれないですね。
去年育休から復帰したあと、新しく鎌倉彫金工房の副店長を務めています。といっても副店長ならではの特別な仕事は今はなく、接客と石留めなどの加工作業をしています。
どのように接客するかは、すべて職人に委ねられる
この仕事の醍醐味は、いろんなお客様がいらっしゃること。本当に難しいです、人によって心地のよい接客が異なるので、これを言えば絶対大丈夫というフレーズやキーワードもないですし。
例えば、少し表情が固かったり、楽しめていないのかなというお客様がいらっしゃることがあります。そんな方に作業を進めていただく中で「すごくいいですよ」とお声がけをする。その一言だけで、テンションが上がって笑顔になる時があるんです。初めての指輪作りで不安を感じられていただけだったのだと思いますが、それが波及して一緒にいらしていたお相手の方も笑顔になったりする。
当然指輪作りには制作の手順がありますが、どのように接客するか、どのようにお作りいただけるかは、担当する職人にすべて委ねられているんです。こうすべきと教わったこともないですし、お客様と接していく中で自分で感じて引き出しを増やしていくしかない。難しいんですけど、その分楽しさ、醍醐味につながっています。
今はまだ、山だとしたら一合目の麓
加工における醍醐味は、やっぱり、奥深さ。上を見たらキリがないくらいですが、それを覚えていける楽しさがありますね。
新しいことを学び続けられるというのは、“この歳で”と言ったら怒られるかもしれませんが、誰でも経験できることではないと思っています。そこは本当にありがたいというか、楽しみながらできています。
今はまだ、山だとしたら一合目の麓。少しずつ少しずつやって覚えていっています。
二見さんがいたら何となく楽しい感じになるよね
仕事をする上で大切にしていることは、できる限り楽しくいることです。楽しそうな人の周りって楽しそうな雰囲気がしますよね。楽しそうな人と接してるときは、それに引っ張られてこっちまで楽しくなるし、逆に落ち込んだりイライラしたりしていても相手に伝わってしまいます。
お客様だけに限らずスタッフと話をしている時もこれだけは大切にして、二見さんがいたら何となく楽しい感じになるよね、みたいな感じで思ってもらえたらいいなって思っているんです。
楽しむために具体的にやっていること? 自分の親しい人を思い浮かべながら接客することはよくあります。例えば友達へはこんな堅苦しい言葉は使わないなとか、もっと楽しんでいるよなとか。そうイメージするだけで、自分も楽しめているような気分になって、本当に楽しくなれるんです。
自分が楽しむためには、余裕がないといけません。加工など、日々の仕事に追われると余裕がなくなりがち。そして余裕がなくなると、無意識に態度に出てしまう。「今の自分、ちょっと感じ悪かったな」と反省することもありますね。
余裕を持てるようにという意味でも、加工の技術をどんどん覚えて着々と山に登っていくしかないなって、すごく感じています。
二見のおすすめリングは……
ホワイトゴールド/甲丸/2.0mm幅/クリア仕上げ
自分の結婚指輪はプラチナを選びましたが、色味が渋くて落ち着きもあるホワイトゴールドを日々見ていて、プラチナよりも好きなりました。同じ銀色だったらプラチナを選ぶ方がほとんどかもしれないですがおすすめです!幅は、2.5mmだと太いし1.5mmだとちょっと細いしで間をとって。甲丸デザインもクリア仕上げも完全に自分の好みです(笑)