楽しんでもらわないと、この仕事である意味がない
Craftman interview 01
T.SUZUKI
5年前、「接客とものづくりの両方ができる仕事がしたい」とテーマパークのスタッフから転身を果たした鈴木。いつでも朗らかで人が好きな彼女が、職人になったきっかけやどのような想いでお客様と、指輪と向き合っているか、話を聞きました。
指輪作りはまったくの未経験
前職はテーマパークのスタッフをしていて、指輪作りはまったくの未経験。門を叩いた時は厳しく教えられるものだと勝手にイメージしていたものの、疑問を持てばちゃんと教えてくれるし、全員が優しくて驚きました。入社したばかりのころのことを思い出すと、印象に残っているのは電話応対です。とっても苦手だったので、指輪を作る修行そっちのけで電話の練習ばかりしていた気がします。
現在は、結婚指輪や婚約指輪を手作りされるお客さまの接客と、御成町店の2階にある加工場で石留めや特注加工でお預かりした品の加工、あとは予約の管理やネットからいただいたお問い合わせに返信したり、お掃除したりとかの事務も担当しています。もちろん電話も出ますよ(笑)
大工の祖父による“ものづくり”に感動
接客が好きだったのでしたい。ただそれだけだと自分が生きていくのになんだかつまらないから、プラスでもう1つ、そんな都合のいい職場ってないかなと思っていました。接客もできるし、ものづくりもできる。鎌倉彫金工房は私にとって完璧な職場だと思っています。
ものづくりに興味を持ったのは祖父。自宅の一角を壊して駐車場にしたりとリフォームもお手の物で、遊びに行くたびに家が変わってるんです。自慢屋の祖父でしたから「見てごらん」って(笑)幼い頃からそれを近くで見てきて「竹一本で色々な物ができるんだ!」「何もないところから自分で作れるんだ!」って感動して、面白そうだと感じていました。
だからジュエリーでなくても良かったということですよね。ひょっとしたらガラス細工だったかもしれないし、造園だったかもしれない。ただ接客もできる仕事となると珍しいんじゃないかな。
私の役割は「お客さまに良い思い出を作っていただくこと」
人と関わること、特に会ったことない人と話すのが好きだから、接客の仕事が大好き。ただ話すのは不得意で、実はこれまで“伝える”ということに苦手意識があったんです。だから、お客さまが「わー」っと驚いている姿とか、「できた!」と喜んでくださったり感動されたりしているのを見ると安心します。やりがいや面白みにも繋がりますよね。
特にここでの私の役割は「お客さまに良い思い出を作っていただくこと」であり、いらっしゃるお客さまについても、年齢も違いますし、おとなしい方もいれば、ワイワイ作られる方もいらっしゃいますよね。だからマニュアル通りの画一的な接客ではうまくいかないんです。
接客中の自分の話し方をチェックしたくて、レコーダーを買って録音してみたこともあるんですよ。そうしたらここの論理が破綻しちゃってるとか、伝わらない言い回ししてるなとかが分かるんです。
楽しんでもらわないと、この仕事である意味がない
指輪の完成度、品質は当たり前。ただそれと同じくらい接客が大切です。やっぱり楽しんでもらわないと、この仕事ってある意味がないというか。鎌倉彫金工房である意味はこの接客にこそある気がしますね。綺麗な指輪をしたいと思えば、ジュエリーショップで買っていただけるじゃないですか。そんな中で鎌倉彫金工房を選んでいただいた方のために、接客や楽しくお過ごしいただくことをちょっとでも追求した方がいいですよね。
譲れないことは、丁寧に、より楽しくという点。これまでずっと“楽しさ”だけを意識していたんですが、丁寧さも大切に感じるようになりました。最近ようやく(笑)
あとは、入社5年、あっという間に時間が経ってしまって。まだまだ新人みたいな気持ちでいたものの、最近では新入りのスタッフに教える場面も増えてきました。私もまだまだ修行中の身ですが、「私もそうだった〜」と寄り添いながら、私が入社した時に感じた「優しくてとっても丁寧に教えてくれる」を実践したいんです。
鈴木のおすすめリングは……
甲丸デザイン
普段の生活の邪魔をしないデザイン。やっぱりシンプルが一番だと思っています。すっきりしてるのが好きっていうのがあるんですけど、私自身、甲丸を身につけることが多いです。素材の好みは、華やかで肌なじみも良いK18。ただ、両親がプラチナの結婚指輪を着けていたんですが、年数が経って傷がついている感じがかっこよくて憧れていました。だからプラチナも…選べない(笑)